歴史的仮名遣についてのサイト

歴史的仮名遣の概要

内容 [編集] 現代仮名遣と比べて以下の様な特徴がある。 * 「ゐ」(ヰ)、「ゑ」(ヱ)を使用する。 * 連濁・複合語以外でも「ぢ・づ」を使用する。 * 助詞以外でも「を」を使用する。 * 拗音・促音を小字で表記しない(外来語は別)。 * 語中語尾の「はひふへほ」は「ワイウエオ」に発音が変化(ハ行転呼)したが、歴史的仮名遣では発音の変化に関係なく「はひふへほ」と表記する。 * 「イ」の発音に対し「い / ひ / ゐ」の三通りの表記がある。 * 「エ」の発音に対し「え / へ / ゑ」の三通りの表記がある。 * 「オ」の発音に対し「お / ほ / を」の三通りの表記がある。 * 長音の表記に独自の規則がある。 * 活用語の活用語尾の仮名遣は歴史的な形態の表現を発音より優先する。 - 例:「笑オー」(「笑う」の未然形+助詞「う」。歴史的には、「笑はむ」→「笑ワウ」→「笑オー」のように変化したもの)を現代仮名遣では「笑おう」と表記し、これに合致させるために後付け的に、「笑う」の未然形は「笑わ/笑お」の二種類であるとした。いっぽう歴史的仮名遣では未然形はあくまで「笑は」のみであり、「笑おう」は「笑はう」となる。ここでは「む」を「う」に置き換えるにとどめ、それ以外の音変化(「は→ワ」および「ワウ→オー」)は綴りに現れていない。 * 発音に対する仮名遣の候補が複数ある場合、どれを選択するかは語源や古くからの慣例によって決められる。語源研究の進歩により、正しいとされる仮名遣が変る事もある。 - 例:山路は「やまぢ」。小路は「こうぢ」。道のチと同根だから。また、紫陽花は「あぢさゐ」となる。語源は諸説あって不明だが、「あぢさゐ」の表記を用いる。 * 歴史的仮名遣の中にも揺れのあるものが存在し、これを疑問仮名遣とする事がある。 - 現在では訓点語学や上代語研究の発達により、大半は正しい表記(より古い時代に使用=語源に近いと考察される)が判明している。ただし誤用による仮名遣のうち、特に広く一般に使用されるものを許容仮名遣とすることがある。例:「或いは / 或ひは / 或ゐは」→「或いは」。「用ゐる / 用ひる」→「用ゐる」。「つくえ / つくゑ」(机)→「つくえ」。 * 「泥鰌」を「どぜう」としたり、「知らねえ」を「知らねへ」としたりするのは歴史的仮名遣ではなく江戸時代の俗用表記法であり、特にその根拠はない。 字音仮名遣など [編集] 漢字音の古い発音を表記するためにつくられた仮名遣いを字音仮名遣と呼び、広義の歴史的仮名遣にはこれも含む。ただし字音仮名遣は時代によってその乱れが激しく定見を得ないものも多いうえ、和語における歴史的仮名遣とは体系を別にするものであるから同列に論ずることはできない。 歴史的仮名遣における字音仮名遣の体系的な成立はきわめて遅く、江戸期に入って本居宣長がこれを集大成するまで正しい表記の定められないものが多かった。明治以降、現代仮名遣いの施行まで行われた仮名遣ではもっぱらこれによっている。 以上のような成りたちから、歴史的仮名遣の正当性を主張する論者にも字音仮名遣を含める人(三島由紀夫)と含めない人(福田恒存・丸谷才一)とがいる。 * 「くわ」「ぐわ」という表記は、現在では「カ」「ガ」の発音を表す。 * ア段+「う」「ふ」という表記は、現在では「オー」の発音を表す。 * イ段+「う」「ふ」という表記は、現在では「ユー」の発音を表す。 * エ段+「う」「ふ」という表記は、現在では「ヨー」の発音を表す。 * エ段+「い」という表記は、現在では「エー」「エイ」の発音を表す。 * オ段+「う」「ふ」という表記は、現在では「オー」の発音を表す。 * 明治以降、外来語の特殊表記として以下の方法が考え出された。 o 「うぃ」「うぇ」を「ウヰ」「ウヱ」等と表記する。 o 「うぃ」「うぇ」を「ヰ」「ヱ」等と表記する。 o 「ヴァ」を「ワ゛」(ワに濁点)と表記する。 歴史 [編集] 歴史的仮名遣は契沖が和字正濫抄(1695年)以降の諸著作で、日本書紀・古事記・万葉集からだいたい平安時代中期以前の仮名遣い用例に即した仮名遣いを標榜したのにはじまる。この立場は楫取魚彦や本居宣長などの国学者に受けつがれ、理論づけがなされていった。また明治維新後、政府は法案に歴史的仮名遣いをもちいるようになり、公教育にも導入されたことにより、それまで国学者の間でのみもちいられていたこの仮名遣いは公的なものとされていく。しかし、その非表音的立場は幾度となく批判され、ついに1946年にハ行音転呼などを反映させた「現代かなづかい」が公教育にもちいられるようになったことで、再び特殊な層が用いる仮名遣いとなっていった。 背景 [編集] 時代の変化に伴い日本語の発音は変化する。そのため、語の表記と発音とにはしばしばずれが生じ、同音でも異なる表記がありうるようになった。そのとき、厳密を重んずる上である一つの表記を正しいものと看做し、それとは別の表記を誤りと決定する必要が生じ、仮名遣が考えられるようになった。 鎌倉時代初期には発音と表記とにずれが生じ、既に表記が混乱した状態にあった。そのため、藤原定家は古い文献を渉猟した上で「を・お」「え・ゑ・へ」「い・ゐ・ひ」の区別に就いて論じた。これに行阿が補正・増補を行って定家仮名遣が成立した。江戸時代まで定家仮名遣は正式なものとして、歌人の間などに普及した。しかし、定家らの調べた文献は十分古いものではなく、すでに仮名遣の混乱を含んだものであった。また、いくつかの語に就いてはアクセントに基づいて表記が決定されたため、上代のものと異なる仮名遣が「正しい」とされた場合があった。 制定 [編集] 江戸時代になって契沖は万葉集(萬葉集)などのより古い文献を調べ、定家仮名遣とは異なる用法が多く見られる事を発見し、それを改訂して復古仮名遣を創始したのである。その後、本居宣長らに依り理論的な改訂がなされ、更に明治以降の研究によって近代的な表記法として整備された。 明治以降 [編集] 明治維新前後以来、国語の簡易化が表音主義者によって何度も主張された。それらは漢字を廃止してアルファベット(ローマ字)や仮名のみを使用するもので、中には日本語の代りにフランス語を採用するものもあった。表記と発音とのずれが大き過ぎる歴史的仮名遣の学習は非効率的である、表音的仮名遣を採用することで国語教育にかける時間を短縮し、他の学科の教育を充実させるべきであると表音主義者は主張した。これに対して森鴎外や芥川龍之介といった文学者、山田孝雄ら国語学者の反対があった。民間からの抵抗も大きく、戦前は表音的仮名遣の採用は見送られた。 敗戦直後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の民主化政策の一環として来日したアメリカ教育使節団の勧告により政府は表記の簡易化を決定、国語審議会の検討による「現代かなづかい」を採用、内閣告示で実施した。以来、この新しい仮名遣である「現代かなづかい」(新仮名遣、新かな)に対して歴史的仮名遣は旧仮名遣(旧かな)と呼ばれる様になった。なお漢字制限も同時に為され、当用漢字(現・常用漢字)や人名用漢字の範囲内での表記が推奨され、「まぜ書き」と呼ばれる新たな表記法が誕生した。 この国語改革に対しては、批評家・劇作家の福田恆存が『私の國語教室』を書いて現代仮名遣の論理的な矛盾を衝き、徹底的な批判を行った。現代仮名遣は、表音的であるとするが一部歴史的仮名遣を継承し、完全に発音通りであるわけではない。助詞の「は」「へ」「を」を発音通りに「わ」「え」「お」と書かないのは歴史的仮名遣を部分的にそのまま踏襲したものであるし、「え」「お」を伸ばした音の表記は歴史的仮名遣の規則に準じて定められたものである。 また福田は「現代かなづかい」の制定過程や国語審議会の体制に問題があると指摘した。その後、国語審議会から「表意主義者」4名が脱退する騒動が勃発し、表音主義者中心の体制が改められることとなった。その結果、1986年に内閣から告示された「現代仮名遣い」では「歴史的仮名遣いは、我が国の歴史や文化に深いかかわりをもつものとして尊重されるべき」(「序文」)であると書かれるようになった。 現代仮名遣いは戦後速やかに定着し、1970年代以降は、小説や詩のほとんどが現代仮名遣いで書かれるようになっている。しかし、不完全な現代仮名遣の見直しを含む国語改革と歴史的仮名遣の復権を主張する人は今も残る。現存の作家では阿川弘之、丸谷才一、大岡信、高森明勅等、学者では小堀桂一郎、中村粲、長谷川三千子等がそれであり、井上ひさしや山崎正和にも歴史的仮名遣によって発表された著作がある。 また最近では個人がインターネット上に文章を発表することが可能となっているため、今日でも一部では歴史的仮名遣いが使用されている状況が窺われる。 なお現代仮名遣は原則として口語文に就いてのみ使用されるものであるので、文語文法によって作品を書く俳句や短歌の世界においては歴史的仮名遣の方が一般的である。 固有名詞においては現代でも歴史的仮名遣が使用されている場合がある。 * アヲハタ株式会社 * 私屋カヲル * 眞鍋かをり * 智頭町(ちづちょう) 参考文献 [編集] * 土井忠生編『日本語の歴史』改訂版、至文堂、1957年6月。 関連項目 [編集] * 上代特殊仮名遣 * 字音仮名遣 * 万葉仮名 * 許容仮名遣 * 仮名 (文字) * 漢字制限 * 当用漢字 * 常用漢字 * 人名用漢字 * 教育漢字 * 中古日本語 * 中古音 * 文語体 (日本語)


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